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ヤマハ製スピーカーの空気録音比較

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「みんなちがって、みんないい」 昭和初期に活躍した 詩人・金子みすゞ「私と小鳥と鈴と」 の一文として有名ですね。多様性の豊かさと、包摂する優しさに溢れたこの詩は、100年の時を経た今なお多くの人に愛されています。 さて・・・冒頭の動画は、我が家で愛用しているスピーカー3台の「 空気録音 」による比較です。空気録音、誰が名付けたか定かではありませんが、スピーカーから流れる音をマイク録音して、擬似試聴を試みたもので、近年YouTube界隈でよく見かけるようになりました。 もちろん、耳で直接聴く響きとしての音色とマイクを介した音色では大きく異なるのは百も承知。しかしながら 条件を揃えて録音することで、各機器の音の傾向や特徴を顕在化させてくれる 興味深さもあります。   今回、空気録音で比較したのは、愛用スピーカーの中から下記3つ↓   (1) YAMAHA NS-B330 . 2015年発売。普及価格帯のハイレゾ対応スピーカー。定価50,600円(税込/ペア)。側面がカーブを描いた美しい筐体と、ツイーター部分のウェーブガイドホーンが特徴的。   (2) YAMAHA NS-BP200 .  2010年発売。オープン価格で発売当初こそ20,000円弱(税込/ペア)の値段を付けていたものの、実売11,000円前後(最安で8,000円前後)。良い鳴りっぷりが評判のコスパ・モンスター。   (3) YAMAHA NS-2 .  1995年発売。定価30,000円(ペア)。インテリアとの調和を目指した質感の高いシックな外観と、ネットワークレスでユニットが持つ音色を活かした構成が特徴。    アンプはいずれも S.M.S.L.製SA300 。私のお気に入りである同社独自のラウドネス補正 「SDB (S.M.S.L Dynamic Bass)」 はONにしています。ロスレスをアンプまでデジタル電装し、アンプ内蔵DACにてD/A変換して再生しています。録音機材は Zoom H6 、96KHz/24bitで収録しました。 以下、各スピーカーの音色に関する私の感想です。   (1) YAMAHA  NS-B330 . 高音と低音の両方がすっかりバランス良く出ています。直接、耳で聴くと音の解像度

「貧しき者は幸いなり」長岡鉄男のオーディオ流儀

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先日の記事 で紹介した「波動スピーカー」を見ていたら、長岡鉄男氏を思い出しました。というのも、 長岡鉄男氏は様々なスピーカーの可能性を模索し続けた代表格の一人だからです。 長岡鉄男氏は1970〜90年代に活躍した(とりわけ80〜90年代に強い影響力を持っていた)オーディオ評論家で、メーカーに忖度しない鋭い批評がウケて、様々な雑誌に連載を持ち、著書も数多く手掛けていました(長岡鉄男氏は2000年5月に74歳で死去)。   そんな長岡鉄男氏が1970年に書いたのが冒頭の画像にある「 マイ・ステレオ作戦 」です。私が生まれる前の本なので、古本で購入した訳ですが。この頃から長岡鉄男氏の評価軸が一貫していた事が分かりとても興味深いです。 長岡鉄男氏は、オーディオの音を良くする(自分好みにする)のは、何もスピーカーやアンプといった機器をより高価なものに買い換える訳ではない、と主張します。 本書 が執筆された1960〜70年においてモダンなライフスタイルである都市生活者としてコンクリート造りの2DK「団地」に住む庶民にとって、住環境を圧迫するような大型スピーカーシステムは不要と説き、部屋の家具や生活スタイルと調和の取れたオーディオシステムの可能性を探っていきます(いまで言うなら都市部の分譲マンションでしょうかね)。 とりわけ、部屋全体の音の反射・反響などを考慮にいれた改善が必要であり、そうした改善なき住環境に高いオーディオ装置を与えても無意味と説き「改善は考えずに買い換えだけを考えるから一生不満は続く」と斬り捨てます。   他にも 本書 では 「貧しき者は幸いなり」と、庶民が故に伸び代のある趣味としてのオーディオを堪能できると主張。「ステレオ高きが故に尊からず」と読者を勇気づけます 。 そして、長岡鉄男氏の特徴でもあるのですが、自分だけのオーディオを自分の手で造ってしまおう!と自作の道に誘い込むのです。そうした自分だけのオーディオ造りとして、本書のタイトルでもある「マイ・ステレオ」の構築を目指す訳です。   波動スピーカーを見て、長岡鉄男氏と本書を思い出したのは、結局のところリスニングポジションが一定では無い住環境においては全方位に音を拡散できる「無指向性スピーカー」に可能性を見出している点です。当時、既に無指向性スピーカーは幾つか製品化されていたものの、普及することはあり

不思議な体験、波動スピーカー。

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昼食に 訪れたカフェ で不思議な体験をしました。店内にBGMが流れているのですが、スピーカーの位置が分からないのです。 流れていた曲は弦楽器奏者のクイヴィーン・オラハレイク氏とピアノ奏者のトーマス・バートレット氏が組んだ2019年のアルバム「 Caoimhin O Raghallaigh & Thomas Bartlett 」(アルバム名はそのまま両者の名前から)。やや陰鬱な弦楽器と繊細なピアノが織り混じった曲です。 当初は天井から音が降ってくる印象でしたが、次の曲では奥の壁面から音が聴こえてきます。周囲を見渡すもスピーカーの姿は見えず。 まったく何処で鳴っているのかスピーカーの位置が掴めなかたのですが、帰り際に見ると下階の天井に「 波動スピーカー 」(M’s system社製「MS1001クラシック」)が吊り下げられているではありませんか(上記写真参照)。   そのカフェ は1階と2階に分かれており、中央が吹き抜け構造となっています。確かに下階の音も上階には届くとはいえ、まさか下階から鳴っているとは思えない音色の響き方だったので衝撃的でした。   「波動スピーカー」とは、1本の筒状の筐体左右にスピーカーが収められた奇妙な形をしています。いわゆる無指向性スピーカーとは異なり、指向性はあるものの、横向きに付けられたスピーカーの音は周囲の壁面に届き、そこからの反射残響音により音を奏でるという実に独特な仕組みのスピーカーとなっています。 波動スピーカーの原理は各種サイトに点在していますのでここでは細かく触れません( 自作されている方もチラホラ見かけます し、かつてはWikipediaにも記事があったようですが現在は削除されているので詳しく知りたい方は Webアーカイブを参照ください )。   スピーカーユニットはフォステクス製のフルレンジを使っているようです。そこから反響した音が聴こえるに過ぎない為、いわゆるオーディオマニアから波動スピーカーは無視される存在です。 また、 発売元のM’s system社 にも売り方に少なからず問題があるように感じるのですが、このスピーカーの原理的なものを理詰めでの説明を避ける傾向にあります。 「これはスピーカーではなく楽器」「アトリエで職人が丁寧に作っている」「このスピーカーは人々の心の中にある

S.M.S.L「SDB」は魔法では無いが素晴らしい音色を奏でてくれる

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中華オーディオ、S.M.S.L社の小型アンプ「 S.M.S.L SA300 」を購入しました。 Amazonで17,000円弱の安価なBluetooth搭載デジタルアンプ です。 安価な割に音が良いと評判は良く目にしていましたが、 SA300 の奥行き方向に長さのある形状が好みでなく、長らく購買欲は湧きませんでした。 しかし、テレワーク環境の卓上「箱庭オーディオ」用としてNS-10MMTと組み合わせて使うアンプとしては机のデッドスペースにちょうど収まるサイズ感であることが分かり、いまでは気に入って使っております。   以前も記事にしましたが、リビングではS.M.S.L社の 小型アンプ「DA-8S」 を愛用しています。このアンプが気に入っているのは、S.M.S.L社が独自に搭載するEQプリセットである「SDB (S.M.S.L Dynamic Bass)」の音色が大変気に入った為です。 【関連記事】中華オーディオS.M.S.L.の提案する音色が心地よい件 中華オーディオメーカー S.M.S.L. が提案する音色「SDB (S.M.S.L Dynamic Bass)」を私はとても気に入っています。今回は、そんなS.M.S.L.とSDBに関するお話し。   先日の記事 で述べましたが、オーディオにおけるアンプの性能差(アンプの違...   詳しくは上記に記載していますが「SDB」にモードを切り替えて再生すると、音がまるで違って澄んだ広がりのある音色になるのです。 本来的なHi-Fi道からすると”外道”なのかも知れませんが、S.M.S.L社の「SDB」愛好家は世界中にいるようで、ネット上でも多くの意見を目にします。 【参考サイト】Any fans of the SMSL "SDB" EQ ? I have a bunch of low to mid-fi gear, as other than vinyl, my main listening is my own ripped library + Qobuz through a Roon setup with about 7 endpoints. I am no audiophile, and don't have golden ears, so m

ヤマハ「NS-10M」の系譜

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ヤマハのスピーカー、 テンモニこと「NS-10M」に関する話を先日の記事で記載しましたが 、一言で「NS-10M」と括っても、実は1978年のデビューから2001年の生産終了に至る迄の期間に様々なバリエーションがリリースされています。どれも似通っているので、私も混同しがちですが備忘録として記載してみました。 【関連記事】テンモニ(NS-10M)人気が再燃する・・・かも。 オーディオ雑誌「 ステレオ時代 Vol.22 」では通称”テンモニ”こと伝説的モニタースピーカ「YAMAHA NS-10M」が特集されています。   まず、大きく3つの世代+αに分かれています(この世代定義は私の見解である点はご留意下さい)。一番右の「NS-10MT」(1995年)を+α扱いにしたのは、それまでのNS-10Mシリーズとは特性が大きく異なる為です。 まず、 元祖となる初代「NS-10M」 は1978年にリリースされます。インピーダンス8Ω、再生帯域は低音60Hz〜20kHz。注意すべきはリリース時点ではスタジオ用のモニタースピーカーとして誕生した訳では無く、あくまで家庭用でのスピーカーだった、という点です。 これは 当時のカタログ にも記載されていますが、あくまで部屋の中で都会的にオシャレに使うことを想定されています。密閉型でキレの良い小型スピーカーとして売り出されており、その背高なシルエットからヤマハ自ら「ビックベン」という愛称をつけている程に、コンシューマー向けモデルでした。   ところがヤマハの意図とは別に、世界中のレコーディングスタジオでスタジオモニター用スピーカーとして好まれ、30万台を超える大ヒット製品となります。 これに気を良くしたヤマハはマイナーチェンジを行い、家庭用からプロユース向けにシフトします。それが第2世代目として1987年に一気に3タイプに分かれてリリースされた「NS-10M PRO」「NS-10M STUDIO」「NS-10MC」です。   「NS-10M PRO」(1987年) は、基本仕様は初代と変わらず、インピーダンス8Ω、再生帯域は低音60Hz〜20kHzなれど、初代「NS-10M」の正統進化版として高音域を狙うツイーター部分の仕様を若干変更しています。 当時、初代NS-10Mではツイーターの高

テンモニ(NS-10M)人気が再燃する・・・かも。

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オーディオ雑誌「 ステレオ時代 Vol.22 」では通称”テンモニ”こと伝説的モニタースピーカ「YAMAHA NS-10M」が特集されています。 再度、お知らせです。 ステレオ時代は最新22号から一般書店販売から、ネット直販および特約店での販売に変わりました。 一般の書店では販売しておりませんのでご注意ください。 ステレオ時代 公式HP https://t.co/gSgyqhMHIR から送料無料で購入できます pic.twitter.com/nSLqpHDVe1 — ステレオ時代 (@StereoJidai) January 28, 2023 私、NS-10Mには苦い想い出がありまして・・・。一時期使っていたのですが、私には相性が悪かったのです。   以前、ある録音スタジオにてレコーディングエンジニアとお話しする機会がありました。 スタジオに置かれたNS-10Mを見て「これ、以前にウチでも使ってました」と言うと、そのレコーディングエンジニア氏は「え?自宅のリスニング用に?ナンで?」と怪訝そう言います。「コイツは音の事なにも分かって無いんだな」という眼差しを向けられたものです・・・。 そのエンジニア氏いわく 「 テンモニはあくまでモニタ用途として優れているだけで、いわゆる自宅のリビングで寛いで音を愉しむようなスピーカーでは無い 」 との事。周波数特性からも明らかなように、低域は100Hz辺りから、高域も15KHz辺りからバッサリと切られています。 (YAMAHA公式サイトの PDFマニュアル より引用) 「 NS-10Mが優れているのは、まさに余計な低音や高音が無いので音のバランス確認等、スタジオでの録音チェックには優れている。 」 「 しかしながら逆に言うと、豊かに広がる低音も無ければ、澄み渡る高域音も無い。故にこのような特性を持ったスピーカーを自宅でのリスニング用途とするのは愚かだ 」と・・・。    まったくエンジニア氏の仰る通り。私がNS-10Mを使わなくなった理由が正にそこにあったからです。 確かに密閉型でキレのある音でしたが、ちっとも楽しく無いのです。解像度は高い割に噂に聞いていた程には高音の響きも良くなかったのはエンジニア氏の指摘にあるよう、大胆に切り落とされた高音ゆえの音色なのでしょうね。 そ